小研究No.13「ヒソカに殺される為に試験官になった男」にて取り上げた、トリックタワーでヒソカに復讐しようとした男(以下、復讐者)についてじっくり考えてみたので、それをまとめてみたいと思う。
まず前提として、次の事が解る。
それでは、本題に入ろう。
●1:ヒソカは「その割にはあまり進歩してないね」と言っているが、では何が少し進歩したのか? 以下の可能性が考えられる。
a:武器が変わった
b:刀の回転速度が上がった
c:刀を操る手の動きが向上した
前回とは全く別の武器になっていたとしたら、進歩したかどうかは解らないはずなので a ではない。
2と3のどちらかなのだが、残念ながらそこまでは解らなかった。
●2:前回の戦いの後(つまり今回)、復讐者は一体何の修行をしたのだろうか?
d:念能力の習得(念を覚えていない場合)
e:念能力の向上(念を覚えている場合)
f:無限四刀流の習得
ここで問題となるのが、「復讐者は前回の戦いの時にも刀を投げていたか」という点だ。
もし投げていれば“飛んでくる曲刀を取るための半年以上の修行”というのは過去の話なので、今回は半年以上もの時間を念の修行に使える。もし投げていなければ、今回の修行のほとんどを曲刀キャッチに費やした事になり、さらに鍛錬が必要なので、念の修行などしている暇は無いはずだ。
ここで注目されるのが、ヒソカが曲刀をキャッチした時の、復讐者の驚き方である。もし前回も曲刀を投げていたのなら、その1年後の戦いで曲刀をキャッチされても「見切られてしまったか」程度のものだろう。この1年でやっとマスターした曲刀キャッチだからこそ、あそこまで驚いたのだ。だいたい、前回は曲刀1本だったので、唯一の武器を投げるなんて事をするはずが無い。つまり修行内容は無限四刀流の習得のみであり、念を覚えたり新たな念能力を開発したりといった修行はしていない。
●3:復讐者は、なぜ戦闘中に念能力を使わなかったのだろうか?
(念能力を覚えずにヒソカに挑戦したのなら ただの間抜けと言う事で、ここでは念能力者であると仮定して話を進める。)
g:戦闘用の能力ではないから
h:強化系だから(殺傷力などを強化)
i:切り札を残しておきたかった
2で、今回は念の修行はしてないと解ったので、もし i だとすると、切り札となる念能力は前回の戦いの時にも使えた事になる。前回でヒソカの強さは解ったのだから、今回はさっさと念能力を使えばよかったのだ。それをしないという事は、切り札となる念能力は無いという事だ。さらに、殺される直前の悔しがり方から見ても、切り札などは無さそうだ。となると可能性は g か h と言う事になる。
●4:復讐者の念能力は何か?(復讐者は念能力者だと仮定する。)
復讐者の念能力を暴くためには、その前に考えなければならない事が2つある。
まず、前回の戦いで受けた傷の治療に何日かかったか、という点だ。治療に時間がかかれば、それだけ修行日数は減ってしまう。もちろん、どんな傷を受けたかによっても治療期間は変わる。ここで見てもらいたいのが3巻38ページだ。見た所、復讐者には顔にしか傷が無い。服の下にも傷があるかもしれないが、「この傷の恨み」と言っているので、その傷は見えているという事になる。その時、服をめくって傷を見せたり、服に隠れている傷の場所を指で指したりもしていないので、傷を受けたのは顔だけという可能性は高いだろう。となると顔だけで死にそうになるか? という疑問も浮かぶが、これは恐らく顔に重傷を受けた後に頭に強い衝撃を受け、気を失ったのだろう。(修正:むしろ顔だからこそ死にそうになる。)……そう考えると、まぁ恐らく完治するまで待ちはしないだろうが、半殺し状態から動ける様になるまで、だいたい2〜3ヶ月……といった所だろうか?(知識が無いのでよく解らないが…)
次に、曲刀を投げようと考えるだろうか、という点。見てもらえば解ると思うが、投げた曲刀はかなりの高速回転をしている。その速さは「ギュン」という効果音からもうかがい知れるだろう。それほどの高速回転をしている曲刀を取るのは、物理的にかなり難しい。ここで回転している刀を想像してもらいたいのだが、回転している刀の刃が“手を差し出す場所”を通り過ぎてから、刀の柄の部分が回ってくるまでに手を入れないとキャッチできないのだ。
下手をすれば手を切り落としかねない危険な修行をしようと思う人がどれだけいるだろうか? それなら念の修行をした方がいい気がするのだが。取るタイミングをつかむまでは手の代わりに木の枝などを使っていたのかも知れないが、最終的には手を使うのだ、ケガをしない可能性はあまりに低い。
さて、ここまで考えると、1つの仮説にたどりつく。それは、“復讐者は強化系で、念能力は傷を治療できるものなのではないか”というものだ。能力はクラピカの“癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)”の様なものだと思ってくれればいい。復讐者は傷を癒す能力があるからこそ、危険な修行をする気になったのではないだろうか。しかしそうなると、前回の闘いの傷はすぐに治療でき、傷跡も残らないのではないかという疑問が湧くが、これは彼が気を失っていたために念能力を使えず、治療に時間がかかったと考えられる。残った傷跡も、消そうと思えば消せそうだが、ヒソカへの恨みを忘れないためにわざと残しておいたのかもしれない。
彼の肉体も、いかにも強化系らしい体つきだ(ウボォーギンを連想させる)。彼が強化系である可能性は高いだろう。3の疑問“戦闘中に念能力を使わなかった理由”は、 g と h の両方だったのだ。
以上の事から導き出される、復讐者の行動は以下の通りである。
第286回ハンター試験(前回)にて試験官を務めた復讐者は、受験生であるヒソカに出会った。彼はヒソカによって顔に重傷を負わされ、さらに頭に強烈な一撃を加えられた。彼は自己治癒力を強化する念能力を持っていたが、それを使う間もなく、頭への一撃によって気を失ってしまった。ヒソカはとどめをさそうとしたが、居合わせた他の試験官に阻まれ、さらに不合格を通告されたので、ヒソカはそれ以上手を出さずに試験会場を去った。
復讐者は意識不明の重体だったが、およそ1ヶ月ほどで目を覚ます。しかし体力的な問題や精神的なショックもあり、すぐには念能力を使えなかった。やがてハンター試験から2ヶ月ほどがたち、体力も回復し、精神的にも安定していた彼は、打倒ヒソカを決意する。ほとんど治った顔には傷跡が残ったが、ヒソカへの恨みを忘れないために、あえて念能力で傷跡を消す事はしなかった。
彼は、ヒソカを倒すための新たな技を考えた。強力な殺傷力を持ち、簡単にはマネのできない技。その条件を満たす“無限四刀流”という技だ。彼は手に傷を負いながらも、飛んでくる曲刀を受けるのに半年以上も費やし、残りの数ヶ月を無限四刀流の鍛錬に割き、約10ヶ月間の修行を終えた。修行の甲斐あって、彼は無限四刀流をマスターし、曲刀の回転速度、手のこなしもかなり向上した。
そして、第287回ハンター試験。彼はハンター協会に前もって試験官を志願しておいたので、例外的に試験官になる事ができた。そしてトリックタワーにてヒソカと戦えるよう仕組んでもらい、彼はヒソカに復讐するチャンスを手にしたのだ。
…しかし、後は知っての通り、簡単にマネのできないはずの曲刀受けをあっさりと、しかも両手でされてしまい、手を封じられたところでヒソカに殺されてしまった。