2001年1月4日公開(アルキス作)
無謀
“最新鋭の巨大移民戦闘艦「千代の富士曙丸(ちよのふじ あけぼのまる)」を奪還せよ”
これが、ファイラに渡された指令書の全内容である。
「…ちょっと、これ1行だけ?
戦艦の特長すら書いてないじゃないの!
全く、ふざけた物ばかりだわ…
この指令書も、この戦艦の名前も、上官達も…」
ファイラが自分の小型航宙艦の中で、指令書に向かってブツブツ文句を言っていると、
遥か遠くにある星の近くで爆発が見えた。
「あら、ずいぶん大きい爆発!
かなり大規模な戦闘ね…
こんなふざけた指令より、あっちの方が面白そうだわ」
ファイラは指令書を後ろに放り投げると、航宙艦で爆発のあった方へ飛んだ。
しばらく飛ぶと、爆発のあった辺りに巨大な航宙艦の影が見えて来た。
「あれは…… フン、捜す手間が省けて良かったわ」
ファイラは、その巨大な航宙艦の近くに来て、そう感じた。
その航宙艦のボディには「千代の富士曙丸」と書いてあったのである。
その近くには小型の航宙艦がいくつかとまっており、その中の1艦が大破していた。
どうやら、先刻の大爆発はこの小型艦による物だった様だ。
小型艦がそうなった理由はすぐに見て取れる。
千代の富士曙丸の側面には、大型の砲台がいくつも並んでいるのだ。
「これだけの装備なら、私が手を出す必要は無いんじゃないの?」
ファイラはそう思った。
だが、次の瞬間、彼女の IQ450 の頭脳がひらめいた。
「そうだ、あの千代の富士曙丸を奪って、私の物にすればいいんだわ!
そろそろ新しい航宙艦が欲しいと思ってた所だし…
さすが私、IQ450の頭脳は素晴らしいわ」
別に、IQ450じゃなくてもそんな事は思いつくのである。
そんなツッコミはどうでもいいとして、今 彼女のIQ450は、脱線して倒れかかってるのに
さらにスピードアップしようとする暴走列車の如く突っ走っている。
そんなおかしな例えもどうでもいいとして、ファイラは千代の富士曙丸の中に入る場所を捜していた。
すると、突然 千代の富士曙丸の腹の部分が開き、そこに回りにいた小型航宙艦が近付いて行った。
おそらく千代の富士曙丸の中に敵が侵入し、内部から操作して仲間を招き入れようとしているのだろう。
ファイラはすかさず、他の航宙艦と共に中に入って行った。
第3話に続く。