2001年1月14日公開(アルキス作)

無謀


HP連動企画 第4話「ファイラ暗殺計画を“潰せ”!」


「何かしら? この男…」

ファイラは、謎のカプセルの中に入って目をつぶっている白い男を見てこうつぶやいた。
そのカプセルにはいくつものコードやパイプが繋がっており、内部は緑色の液体で満たさ
れている。そして当然、底からは泡がブクブクと立ち上っている。そう、どこからどう見
ても、典型的な研究用カプセルなのである。

「何だか危険な匂いがするわね…。さっきのヘビ男が造ったのかしら? それとも…」

そこまで考えて、おかしな事に気付いた。ヘビ男は、ついさっき自分の仲間を千代の富士
曙丸…ちよちゃんの中に招き入れた。と言う事は、ヘビ男もちよちゃんの中に入ってから
それほど時間は経っていないはず。しかしこのカプセルは一朝一夕で出来る様な物ではな
い。つまりヘビ男が造った可能性は低いのだ。

「じゃあ、元々ちよちゃんに搭載されていたのかしら?」

だが、その可能性も低いと気付く。このカプセルはその雰囲気からして、どう考えても危
険な物だ(ファイラの動物的…いや予言的直感は物凄く、ファイラ自身も直感を信じてい
る)。しかし宇宙連邦政府は、「千代の富士曙丸を奪還せよ」と言う指令を下したのだか
ら、その航宙艦が危険な要素を含んでいるとは考えにくいのである。

「と言う事は、宇宙連邦が造ったのかしら? でもなんでちよちゃんに…」

その時。

「見つけたぞ、ファイラ!」

ファイラが声のする方を見ると、ヘビ男とゲルヨン達がこっちを見ている。

「あら、見つかった… さすがの私でも、あのゲルヨン達を1人で相手するのはきついわ
 ね………じゃあ、ちょっと遊び心を発揮しちゃおうかしら」

ファイラはニヤッと笑うと、突然 カプセルを破壊した。カプセル内の男を覚醒させ、自
分の味方に付けてみようと思ったのだ。
カプセルが壊れ、液体が流れ出る。そして、ついに白い男がその眼を開いた。

「あなたを目覚めさせたのは私よ。さぁ、私の命令に従いなさい。まずはあの醜いゲルヨ
 ン達を粉砕して来るのよ!」

だが、白い男はファイラの方を向いたまま微動だにしなかった。かと思うと、突然 眼を
大きく見開いた。と同時に眼全体が真っ赤に光り、ファイラを凝視した。

「…オオオオオォォォォォォ!!!」

白い男は突然大声をあげると、ファイラに向かって拳を突き出した。ファイラはそれを紙
一重でかわし、ヘビ男達の方に素早く移動した。

「ちょっと、ヘビ! あの男が共通の敵って事で、今だけ私と協力しない?」
「な、何?」
「あんただって、あいつに殺されたくはないでしょ」
「う、うむ… 仕方が無い、今だけだぞ…」

ヘビ男は、ファイラの要求に渋々ながら頭を縦に振った。

(ふふん、馬鹿なヘビね。あの男と一緒に、あんた達も消えてもらうわ!)
(ふふん、馬鹿な女だ。あの男と一緒に、お前も消えてもらう!)

2つの悪魔の脳は、同時に黒い考えを巡らせていた。

「さぁヘビ、まずはゲルヨン達をあいつに襲わせるのよ!」
「さっきからヘビヘビうるさいぞ! ………まぁいい、行け! ゲルヨン!」

ヘビ男が白い男を指差しながら叫ぶと、待機していたゲルヨン達が一斉に男に向かって走
り出した。だが…

「あ──────っ!?」

突然、ヘビ男もゲルヨン達と共に白い男に向かって駆け出した。いや、引っ張られている
と言った方が正しいだろう。よく見ると、ゲルヨンの背中の角とヘビ男のスーツが、ひも
で結ばれている。

「あーらヘビさん、あなた自ら向かって行くなんて、勇敢なのね」
「ファイラ! 貴様、いつの間にこんなひもを…!」

しかし、その時既に部屋にファイラはいなかった。ファイラは、ちよちゃんの操縦室に向
かったのだ。

「あの研究室だけ壊れちゃうけど、仕方無いわね」

そうつぶやくと、ファイラは研究室の「慣性中和装置」を OFF にした。
(慣性中和装置とは、車に乗っていて急発進した時に、後ろに引っ張られる様に働く力を
 無くす装置である)
そして、ちよちゃんを超高速で急発進させたのだ。当然、研究室内部は慣性が効いている
ので、白い男達は全員、凄まじいほどのスピードで壁に叩きつけられ、即死した。ファイ
ラはすぐにちよちゃんを停止させ、完成中和装置を ON にした。

「フン、あっけないわね」

ファイラは立ち上がり、男達の死を確認しに行こうとした。その時、操縦室のスピーカー
から怒鳴り声が聞こえた。

「そこまでだ、ファイラ!」
「…誰?」

ファイラがスピーカーに近付き、話しかけた。

「我々は宇宙連邦軍だ! 貴様、グランド・タイタイ・フーチャー・エジプルト・ランゴ
 ロッゴを破壊しおったな。連邦反逆罪として死刑になってもおかしくはないぞ!」
「フン、死刑になる前に死刑にしようとしていたくせに、よく言うわ」
「な、何の事だ? わ、我々はそんな事…」

ファイラの言葉に、宇宙連邦の男がうろたえた。これでファイラは確信した。あの白い男
は、宇宙連邦が造った物だったのだ。つまり、白い男が眠る航宙艦にファイラを向かわせ
そこで白い男にファイラを始末させようとしていたのだ。ファイラの性格ならカプセルを
破壊して男を覚醒させる事は予想がつく。

「これで完全に宇宙連邦が敵にまわった訳ね。いいわ、受けて立とうじゃないの!」

第5話に続く。