2001年4月15日公開(アルキス作)
無謀
◆前回までのあらすじ◆
宇宙暦3930年…
腕はいいが性格は最悪な宇宙連邦の警部、プリペント=ファイラ。
彼女のあまりの派手な活動に、連邦の上層部がついにファイラに処分を言い渡した。
それは第13地区太陽系に転勤させる事。
しかし、その処分の裏には「ファイラ抹殺」という影の計画があった。
だがその計画は見事に失敗、逆に連邦側が大きな痛手を受け、ファイラと連邦は完全に対立する。
その時、ファイラの前に、テロリストグループ“ケロンパ”のボス・田中平八が現れ、ファイラを
過去へ連れ去る。
その目的は、過去に消滅した強力なコンピューターウイルスを奪い、宇宙連邦の反乱分子制圧兵器
“使途”が完成する前に感染させ、過去から宇宙連邦を崩壊させる事にある。
しかし「元の時間に戻る」以外のタイムワープが出来ないファイラ達は、“使途”が完成するまで
待つ事に。
その時現れた未来からの刺客を屈服させ、これから現れる「代1地区長官」を待ちうけるのだった。
HP連動企画 最終話「あれっ来たのって3人じゃなかったっけ」
荒野。その中に破壊された建物。一般人は足を踏み入れない場所。
そこでファイラ達は、遠くから近付いて来る男達を待ち受けていた。
その男達は、先頭を歩く中年男性の後ろに武装兵が数人ついて来ると言う状況で近付いて来る。
「あーら物騒ねぇ、第1地区の長官さん。武装兵なんか従えちゃって」
「フン、貴様を葬ろうと言うのだ… この程度は必要であろう」
長官はファイラから目を離し、ファイラの後ろにいるガーネットに目をやった。
「ガーネット。なぜお前がそっちにいるんだ?」
するとガーネットは、少しも悪びれる様子も無く答えた。
「私は〜“長い物には巻かれよ”タイプなんですわ〜」
「馬鹿めが。そんな小娘より、ワシの方が“長い”だろうが」
「いいえ〜長官は短いですわ〜 …髪の毛が〜」
「何っ!? こ、この…」
そこへさらにファイラが続く。
「いいえ、短いどころか、無いわ」
「き、貴様ら〜…!!」
怒りが頂点に達した長官は、腕をファイラ達の方に伸ばした。
「砲撃!」
しかし、それをすかさずファイラが止める。
「ちょっと待ちなさいよ。過去でそんな事していいと思ってるの? 私達の時代にどう影響しても知ら
ないわよ」
「確かに。だが、この空間破砕砲がロックオンしているのが貴様では無く 貴様の祖先だとしたら……
未来にも大きく影響するだろうが、お前も確実に死ぬよな」
「な、何ですって!?」
「かなり遠くにいる様だが、目標到達まで1秒ほど… 撃たれたくなかったら今すぐ元の時代に帰れ。
貴様ら2人ともな」
「………わ、解ったわ。私達2人は元の時代に帰るわよ」
ファイラは第1地区長官の命令に渋々従い、ガーネットの戦闘艦に 彼女と共に乗り込んだ。
「さすがのファイラも、祖先の命がかかっては言う通りにするしか無かった様だな」
「……………」
ガーネットとファイラの2人は、ガーネットの戦闘艦で元の時代にワープして行った。
「ふふん… 元の時間に帰る時には、“元の場所”にしかワープ出来ない。しかしそこには“使途”が
待ち受けている。奴等は元の時代に帰った瞬間に“使途”によって抹殺される…
フフフ、完璧な作戦だ…!」
その頃、元の時代では。
「第1地区長官が作戦を開始してから10分ほど経つ。そろそろファイラが現れる頃だな」
「この時代に帰る様に仕向け、帰って来た所を“使途”で攻撃する…… 第5地区長官のアイディアは
素晴らしいですな」
「うむ。現れる場所は解っているのだから、確実だな」
ファイラが現れるはずの場所をモニターで見ながら、各地区の長官達がファイラの出現…そして消滅を
待ち望んでいた。と、その時。
「もうファイラは消滅したかね?」
この時代に帰って来た第1地区長官が現れた。
「え!?」
「ば、馬鹿な…」
「まだファイラは現れんぞ! どう言う事だ!?」
第1地区長官は、ファイラの後にこの時代に帰って来た。つまり、第1地区長官がここにいると言う事
は、ファイラはとっくに現代に帰っていると言う事なのだ。しかしファイラはまだ現れない。
だが、その時…
「私はこっちよ!」
一斉に長官達が振り返る。すると、特別会議室の入口にファイラとガーネットが立っていた。
「お前ら、何でここに…」
「あそこに現れるはずだろう!」
長官達がモニターを指差して叫ぶ。
「それは〜私の戦艦で帰って来たからですわ〜」
「何!?」
「ちよちゃんはガーネットに壊されちゃったから、ガーネットの戦艦で帰って来たのよ。
当然、ガーネットがタイムワープを始めた場所に帰って来るわよね」
長官達は悔しがる様な表情をしていたが、すぐに薄笑いを浮かべた。
「フン、まあいい… 予定は狂ったが、既に“使途”はスタンバイ状態だ… すぐにお前を
原子にしてやる!」
だが、その瞬間…
─────ドッカァァァン!!!!!
“使途”が大爆発を起こした。
「何─────!?」
「な、何が起きたんだ!?」
「なぜ“使途”が…!?」
その疑問に、ガーネットがにっこりと微笑んで答えた。
「ウイルスですわ〜」
「何…?」
「過去に行って、完成直前の“使途”をウイルスに感染させたんですわ〜」
それを聞いた第1地区長官は目を丸くして驚いた。
「そんなはずは無い! 状況から言って、貴様等が現代に帰る前にそんな事は出来ない!」
長官のリアクションが気に入ったらしく、ファイラはニヤリと笑った。
「馬鹿ね… ちよちゃんにタイムワープ機能なんて搭載されてないでしょ? じゃあ、私は
どうやってタイムワープしたのかしら」
「まさか、他にも人間がいたと言うのか? …だが、ワシが見た時は2人しか…」
「んなもん、あんたの視界に入る前に隠れさせたに決まってんでしょ? ウイルスの入った
DVD-RAMと一緒にね」
「私達が〜現代に帰った後に〜、田中平八さんがウイルスを使ったんですわね〜」
全てを理解した長官達は、放心状態で立ち尽していた。それを見て、ファイラはガーネット
と共に彼女の戦艦に乗り込み、宇宙空間に飛び出した。
「さぁ、後始末よ! ガーネット、連邦の施設を全て破壊しなさい!」
「了解ですわ〜」
「それじゃーお掃除よ! 砲撃開始ー!!」
(そうだ、一通り破壊したらガーネットふっとばして
この戦艦もらおーっと♪
それから田中平八は…………………………… いいわね、別に。)
無謀小説 完